noa no atamannaka

フェミニストの読書記録、映画記録、考えていること

「あなたのセックスが楽しくないのは資本主義のせいかもしれない」

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セックスはしたい。

 

セックスするときに得られる体温や一種の親密さのようなもの、

大切に扱われている(ように錯覚する)あの感じが好きだった。

 

しかしそれにはかなりの対価を払わねばならない。

 

セックスするにあたって必要なお金、時間、気持ちの余裕(連絡が来ても来なくても平気、都合の悪い時にはちゃんと断れる)、相手の体や心を最低限思いやる余裕、などが、今の私にはないことに気づき、セックスすることを諦めて半年くらいが経った。

 

セックスを諦めるに至った理由は、

それにかかるさまざまなコストが高いと思ったことの他にもう一つあった。

 

(私はシスヘテロ女性なので相手が「男性」なのだが)

セックスにおいて、男女でさまざまなものが不均衡だと痛感したからだ。

 

 

 

まず第一に、妊娠の危険性。

男性はこれを絶対に孕んでいない。

 

セックスはしたいが二度と妊娠はしたくないので

毎月三千円近くお金を払い、避妊と生理不順を治すために低容量ピルを飲んでいた。

 

ゴムをしていても安心できない。

毎日決まった時間に薬を飲まなきゃいけないなんてかなりだるい。

1日飲み忘れただけで冷や汗をかく。

 

こんな思いを君たちはしないだろう、と

体を重ねる人相手にどこか冷めた、いや、憎しみのような気持ちさえあったかもしれない。

 

 

第二に、金銭面の差。

 

そもそも男女間で稼げる金額が違う。

「だからホテル代は男性が負担すべきだ」というのもなんか違う。

「払ってください」とも「払ってくれてありがとう」とも言いたくないので

割り勘していたが、どんどん薄くなる財布に不安を感じている。

なのに「俺たちは『平等』だよね!」と言わんばかりの相手にイラつきさえする。

(こんな感情を抱くような相手とするべきではないんだろうな、と思うようになった)

 

 

 

第三に、「もしかしたら殺されるかもしれない」という危険性を持っているか否かということ。

 

 

男性は「もしかしたら今日会う子に羽交い締めにされちゃうかもな」とか

「刃物で脅されてやりたくないプレイを強要されるかも」などと不安に思いながら会うことはないだろう。

 

「ならよく知らない相手とセックスなんてしなきゃいいじゃん」という声が聞こえてきそうだが、知っている相手とセックスする方が何かと面倒なことに発展すると身をもって知ったのでこの方法を取っていた。

 

 

この手のものはポイントを三つに絞るべきというセオリーがあるのだが、

それに反して4つ目のポイントを上げさせてもらう。

 

第四に、「性生活を楽しんでいる」男性と女性では世間での扱われ方が大きく違う。

 

前者は「男らしい」「価値がある」のように称賛さえされるような雰囲気さえあるのに、

後者は「遊んでる」「汚い」「はしたない」「肉便器」のような言われようだ。

 

複数人と合意の上関係をもっていることを恥じていないとしても、

なかなか他人に聞かれた時に気安く説明しようという気にはならない。

クソいらねえ説教をされる羽目になる。

 

 

 

 

そんな時にこの本の存在を知った。

 

自分が考えていることを、誰かが話していると

「やっぱりそうだよね!?私のきのせいじゃないよね!?」と心強く感じるし、

それを誰かが研究したりまとめたりして本にしてくれているのを読むと、

その考えは確信に変わる。

 

そして、私たちをもやもやさせる正体はなんなのか、一つの答えを見つけてくれてたりする。

 

 

***

 

私が男女間のセックスについて感じている格差について、特に二つ目に上げた「金銭面」についてこの本は紐解いてくれている。

 

二組の母親がいる。

片方は仕事を続けながら子育てし、片方は妊娠がわかると仕事を辞めてしまった。

前者は自分名義のカードをもっているのに対し、後者は夫にカードを、お金を使う権利を握られている。「お願い」しないと使わせてもらえないし、「お願い」しても使わせてもらえなかったりする。よりによって久々に会って食事をしている時に。

 

「セックスの回数が少ないから」お金を使わせてもらえないのだという。

友人に奢られる時にその人がこぼした、「今日彼とセックスして、お金返すね」という言葉に胸が痛くなる。

 

夫婦とはそんなふうに何かを脅しに握られている関係だろうか。

その夫もひどいやつだが、多分こういう話は腐るほどある。

それを「腐るほどある」ようにさせているのは資本主義なのでは・・・と気づきを与えてくれる本でもあります。

 

実はこの本、借り物でまだ所々しか読めていないので、続きは自分が買った時に何度も読みたい。

 

 

***

 

 

章と章の間に過去のフェミニストたちの紹介がされているのもいい。

(リリーブラウンという服のブランドが結構好きなのだが、もしかしてこのフェミニストの名前からきたのか?などと勝手に考えたりした。)